2018年3月26日月曜日

学校環境衛生基準とイソシアネート

 消臭スプレーのテレビコマーシャルを見ていると、お母さんが洗濯が面倒だからと代わりに子供の色々な物にスプレーしてニコニコするシーンが出てきます。

 しかし、私が実験した所では、この消臭スプレーからアメリカの職業病予防の規定値(ACGIH許容濃度)1ppbの20倍近いイソシアネートが部屋中に充満する時が有りました。消臭スプレーされた物を子供たちが学校に持って行ったら、有毒物質を扱う職場より教室がひどい事になります。

 このイソシアネートという物質は、−N=C=O という部分構造を持つ化合物の総称で色々な種類、用途が有ります。代表的なトルエンジイソシアネート(TDI)は臭いを感じなくて(臭いを感じる濃度では生命が危険と言われている)、喘息や皮膚アレルギー等を起こす物質で、トルエンの数万倍の毒性です。また一度喘息を起こしてしまうと、イソシアネートに対して過敏となり、許容濃度以下であっても再び喘息となる。TDIの蒸気、エアゾール或いはミストは眼刺激を引き起こす。TDIは中程度の皮膚刺激性を有しており、稀に皮膚感作や皮膚炎を起こすと言われています。

 また、測定は1ppb(1ppmの千分の一)とかの微小単位を扱い、非常に不安定な物質で短時間に化学変化してしまうので、ISO規格で定められた特殊な捕集方法で高速液体クロマトグラフでの分析や輸入品の特殊な測定器(イソシアネート基の合計を求める)が必要です。

 更に私の家の回りの様な所は外気が2ppb位になる時もあるし、柔軟剤の人と接しただけで0.7ppbとか衣類が汚染されてしまうのが分かっているで、気を付けないと何を測っているか分からなくなります。

 学校ではシックハウスで問題となっているホルムアルデヒドやトルエン等の濃度規格が定められていますが、イソシアネートは規格が有りません。そこで、学校環境衛生基準と職業病予防の許容濃度の規格、私が測定した消臭スプレーから出た値をグラフにしてみました。許容濃度なので値が小さい程毒性が強く厳しい管理が必要です。 

 トルエンジイソシアネートのACGIH(アメリカ合衆国産業衛生専門官会議)許容濃度は1ppbなので、棒グラフには棒が出ていませんので注意して下さい。

2018年3月23日金曜日

前日の消臭スプレーで次の日朝は高レベルのイソシアネート発生

 桜の開花と共に近所からの柔軟剤臭もきつくなってきました。夜中に目が覚めて咳き込んで寝られない事も有ります。昼間に窓を閉めた状態でも活性炭のマスクをしていないと咳が出る時が有ります。

 今回は以前のデータ(2018.01.16実験)で確認の終わった物を掲載します。
 朝測定器を作動させたら、いきなり数ppbのイソシアネートが出ていたという現象です。柔軟剤でも同様の現象を何度も経験しましたが、まだ自信が無いのでもう少し確認してからという事で、今回は前日に消臭スプレーをした物から朝に発生していた例を紹介します。

 当初、朝測定器を作動させたときに高い値が出るのは測定器の誤作動と思っていました。しかし、日によって出たり出なかったりするので、今回誤作動でなく実際にイソシアネートが出ている確認を行いました。

 確認方法は、イソシアネートを検出している時に、スプレーした布巾を何度も離したり近づけたりして変化を見てみる事にします。

香料無添加の消臭スプレー



←前日にスプレーした









←「皮膚科医監修のもと、肌テスト済み」と書かれています。






<朝測定器を作動させて2分後の写真>
9:52測定器を作動させて間もない時の写真

 有毒ガス検知器 SPM Flexには4.9ppb(TDIとして計測)が表示されています。アラーム状態で、画面が赤くなり危険を知らせています。警報音はうるさいので止めていますが、けたたましく鳴っている状態です。

 前日スプレーして夜間放置して置いたら、いつからか分からないがイソシアネートが発生していたものです。




<発生源の布巾を遠ざけると徐々にレベルが落ちる>
9:59サンプルの布巾(青い布)を遠ざけた状態


 測定器の誤作動でない事を確認する為に、イソシアネートを発生していると思われる布巾(青い布)を遠ざけて変化が有るか見てみる。

 前日に無香料消臭スプレー処理した布巾を遠ざけると暫くしてイソシアネートは検出されなくなりました。そして、ポリエチレン袋の中を再度測定するとイソシアネートがまた検出された、計4回確認して同じ結果なので、布巾からイソシアネートが出ているのは間違いない事が確認された。

 トルエンジイソシアネートとして測定した値は下のグラフの様にピークで6.5ppbも有り、アメリカ合衆国産業衛生専門官会議の定める短時間ばく露限界値5ppbを越えています。これは職業病予防の規格で、こんなものが家庭用品から検出されるのは恐ろしい事です。
 家庭用品から発生するイソシアネートで敏感な人は職業病になってしまいます。

<有毒ガス検知器 SPM Flexからダウンロードした測定値>

















2018年3月17日土曜日

この消臭スプレーまだ使い続けますか?

 今まで柔軟剤処理した布を測定した時に、朝一番で有毒ガス検知器 SPM Flexを作動させるといきなりアラームになる現象が何度も発生しました。この測定器は光学センサーを使用しているので、今まで朝暖房が入った事による測定器の誤動作と思っていました。

 この為、柔軟剤処理した布から発生するイソシアネートについては公表してきませんでした。ところが、無香料の消臭スプレーで実験を続けるうちに、朝一にアラームとなる現象が暖房と関係なく出たり出なかったりして、経過を整理するとスプレーして数日後の朝に発生している事が分かりました。

 測定器の誤動作か実際に朝方にイソシアネートが発生した物か、2/25に更に確認した結果をお知らせします。方法としては、イソシアネートが出続けている時に、2階や襖の外側に測定器を移動して測るとイソシアネートは観測されず、また布の入ったポリ袋を閉じると暫く経って検出されなくなる事から、朝一に多量のイソシアネートが出ているのは測定器の誤動作では無くて、本物である事を確認しました。

 以下その経過です。


朝一にSPM Flexを作動させたらアラーム状態

 朝一、SPM Flexを作動させたらいきなりアラームで画面が赤くなっています。

 写真を撮るのが少し遅れたので、ここでは10.3ppbを表示していますが、ダウンロードした測定データではピークが14.9ppbでした(下のグラフ参照)

朝一SPM Flexを作動させたら、いきなりアラーム























 SPM Flexの左側には、ポリ袋に入っているがチャックが開いた状態の青色の布巾(無香料消臭スプレー処理済み)が置いてある。
 SPM Flexを持って2階に上がるとイソシアネートは検出されなくなる。また、襖1枚隔てた玄関でも検出されなかった。

 次に、1階の各部屋の分布を調べてみる




















 一番遠い台所でも9ppb観測された。また、隣の洋室でも6.3ppb観測された。(部屋の仕切りは開いた状態で)

 次にポリ袋の中で布を振って機械的な刺激を与えて増加するか見てみる。




















 布を振ると18.5ppbものイソシアネートが発生した。その後放置して19分経過してもまだイソシアネートが出続ける。

 次にイソシアネートを発している布巾を入れたポリ袋(0.04mm厚)のチャックを閉じて減衰していく様子を見てみる。




















 11分後にイソシアネートは検出されなくなった。(空気中の水分と反応してアミンに変化したと推定される)

 ここで観測されたピーク値の18.5ppbという値は以下許容濃度と比べても如何に大きな値かが分かる。トルエンジイソシアネート2,4-と2,6-の混合物としての許容濃度
                                                                 TLV-TWA     TLV-STEL
ACGIH(アメリカ合衆国産業衛生専門家会議) 1ppb             5ppb

                                                                 許容濃度 常時この濃度以下に保つこと
日本産業衛生学会                                          5ppb            20ppb

 あくまでもこれは有毒物を扱う職場の事で、この値以下に管理すれば絶対大丈夫という物ではない様です。更に以下の注意も必要とされています。
 ・許容濃度は化学物質が皮膚に吸収される可能性を除いた値
 ・許容濃度以下でも身体に異常が出る場合がある

 テレビで良くコマーシャルをやっている様に、洗濯せずに消臭スプレーを子供たちの物にシュッシュと掛けて、数日経つとこの様な値のイソシアネートが発生し、知らない間に部屋中に充満します。

 そして、トルエンジイソシアネートを例にとると、以下の様な症状を起こすと言われています。(職場のあんぜんサイト トリレンジイソシアネート参照→リンク
 赤字の所は、私が実際経験したか経験している症状です。

特定標的臓器・全身毒性
(単回ばく露): ヒトについては、眼、気道、皮膚に対する刺激性、激しい乾性の咳、喀痰、胸部絞扼感、呼吸困難、悪心、嘔吐、重篤な気管支痙攣を伴った気管支炎、肺水腫、肺炎など が報告されている。 21)
    ヒトについては、さらに「長期に亘って頭痛、健忘、集中力欠如、錯乱、人格の変化、易刺激性、鬱のような中枢神経系に対する影響」が見られ 21)、また「高揚感、運動失調、断続的な四肢の痙攣、めまい、意識消失、頭痛、集中力欠如、記憶障害、混乱、被刺激性、抑うつ」等の記述がある。 33)
    呼吸器、中枢神経系の障害(区分1)

 また、動物実験では発がん性が有るとされています。

 これでもまだ、あなたは使い続けますか?

2018年3月1日木曜日

無香料の消臭スプレーが周囲をイソシアネートで汚染し危険なレベルに

 2/20(火)にイソシアネートを検出しなくなったサンプルの布巾をチャック付きビニール袋に入れてチャックを開いたままにしておきました。二日後に別の依頼測定を行おうとブランクチェックを行うと、いきなり警報です。

 汚染した犯人を突き止めようと実験した結果をお知らせします。
 犯人は有毒ガス検知器から約1m離れた位置に置いていた布巾(写真の青い布)でした。2/18に無香料消臭スプレーをして、一旦イソシアネートが出なくなり、チャックを開いたまま放置しておいた物でした。

 経過を整理すると以下の様になります。参考に私の症状も記載しますが、近隣からの柔軟剤による影響も含まれます。
*ppbの値はトルエンジイソシアネートとして計測した値です
2/18(日)  無香料の消臭剤をスプレーし、その直後の測定でイソシアネート検出せず
    19(月)  MAX5.9ppbのイソシアネートを検出→測定後ビニール袋のチャック閉じ
    20(火)  検出せず→測定後ビニール袋のチャックを開いておくと・・・
    21(水) 本日お休み(台湾から一時帰国した息子と会食し生ビール小グラス1杯)
       頭痛で2時間昼寝、その後も動くと頭痛がする。複視がひどい。
    22(木)  布近くでMAX6.7ppbのイソシアネートを検出
       朝起きると鼻詰り、目の周りまで目やに、複視
この先もっとひどい状況に・・・
    23(金) 我が家の1階全体が汚染MAX18.3ppb離れた台所でも12.9ppb
       下肢がひりひりと痒い
    24 (土) そのままだと出ないが布を振るとMAX0.7ppb 2分間発生
       目やに、複視ひどい
       (洗面所や風呂場まで近隣からの強いハッカの様な柔軟剤臭がする)
    25(日) 下の写真の状態でMAX14.8ppb更に布を振ると18.5ppbにもなる
       下肢痒く体だるい。目やに(外は近隣からの石鹸系の柔軟剤臭)

<最初は測定器の誤動作かと>
 有毒ガス検知器SPM Flexは化学テープに一定量の空気を通し、その中の特定成分(今回は全イソシアネート基 -NCO)に反応してテープが変色します。その変色していく過程の変化分を光学センサーで電流変化として読み取り、検量線(標準曲線)と比較して数値を表示する仕組みです。
 このため、センサーにほこりが付いたり、センサーが温度差で曇ったりすると嘘の表示が出る弱点が有ります。寒い室外で測定していて、暖かい室内へ持ち込んだ時などセンサーが曇っていると思われ顕著です。

<誤動作と本物の見極め>
 今回も最初は温度変化かな?と思っていましたが、ずっと室内に置いているし、出ない日と出る日が有りおかしいと思っていました。そこで、SPM Flexを移動して発生源と思われる物から遠ざけてみたり、発生源を隔離したりして測定器の誤作動か実際にその様なイソシアネート基が存在しているのか確かめてみました。

 その結果、写真の様なたった布巾1枚から我が家の1階全体(6畳と床の間+8畳+6畳の3部屋)を全て汚染し、一番離れた台所でさえ8.9ppbで汚染してしまう影響力が有りました。

<今回測定の影響>
 イソシアネートは一般にははなじみが無い物質ですが、アレルギーを起こす職業病物質として恐れられています。そして、その許容濃度はとてつもなく低く、トルエン(シンナーの主成分)の数万分の一、また毒ガスとして知られている青酸ガスの数千分の一です。それゆえ、臭いを感じた時には生命が危ないと言われています。

 そして不安定な物質で、体内の水分と反応してアミンという物質に変化しますが、これも猛毒でイソシアネートとは違う色々な症状が出ると共に長時間体の中に蓄積(半減期が10~21日間)します。

 また、動物実験では発がん性があるという事が言われています。

 たった布巾1枚で1階全体がこの様なレベルで汚染されてしまうという事は恐ろしい事です。洋服とかソファーとかもっと広範囲にスプレーしたらどうかるか、想像しても恐ろしくなります。

 更に、今回途中で布巾の袋を閉じると18分とか19分でゼロになるので、これ位の時間でイソシアネートは消滅(大気中の水分と反応しアミンに変化していると思われる)しています。しかし、袋を開けていると長時間観測されるという事は、次々と布巾からイソシアネートが出続けている事を意味します。

<イソシアネートの許容濃度について>
 代表的なトルエンジイソシアネートについて、ACGIH(米国産業衛生学会)は2016年2月から許容濃度を厳しくしました。それによると、
8時間TWA(時間加重平均)を  5ppbから1ppbに
15分STEL(短時間ばく露限界)を20ppbから5ppbに

 これはあくまで有毒物質を扱う職場の規格で、一般家庭の室内でこれをはるかに超える値が出るという事は異常事態です。

<今後について>
 以前実験した柔軟剤も同様な傾向が見られ、測定器の誤動作と思っていましたが過去のデータを見直すと、どうもそうでなく本物の様です。これについては再試験をして確認したいと思います。
 現在測定器はNPOに一時的に返却していますので、戻ったらまた試験を再開したいと思います。次回は、・・・3Dというのが臭いとイソシアネートに感作されている人から情報が寄せられているので、優先して試験する予定です。

 再開するまで暫く測定はお休みして体調回復に努めます。

<2/23の状況>
場所を移動したり、発生源を遮蔽したりして測定器の誤動作でない事を確認





















<2/25の状況>
10.3ppbを表示し、SPM Flexの画面が赤くなりアラーム状態


  
場所を移動したり、発生源を遮蔽したりして測定器の誤動作でない事を確認