2023年3月24日金曜日

住宅街の外気から微量のホスゲン(化学兵器に使われるガス)検出

 今まで住宅街の外気でイソシアネートや微量のシアン化水素(青酸ガス)を検出してきました。

 このうち、イソシアネートはイソシアネート基を検出したもので、色々な種類のイソシアネートが含まれます。そこでさらに分析を進め、研究機関により高速液体クロマトグラフLC-MS/MSでの分析でイソシアン酸が主な成分である事が確認されています。(他の標準資料が無いイソシアネート成分も多量に含まれる)

 イソシアン酸はタバコの煙や山火事等で発生すると言われていますが、毎日常時続けてこれが検出されるのはおかしなことです。論文を検索するとイソシアン酸はポリウレタンの燃焼時に出るとの事なのでマイクロカプセルの材料にポリウレタンが使われている物が有るのでその可能性が有ると考えます。

 私の借りている有毒ガス検知器ではイソシアン酸を選択的に検出する事が出来ませんが、イソシアネート基として検出すると、柔軟剤臭い衣類に摩擦や湿気+温度を与えるとイソシアネートが発生する事が実験で分かっています。

 イソシアネートが検出されるなら、さらにその原料であるホスゲンも検出されるのではと、有毒ガス検知器Honeywell社のSPM Flexを用いてホスゲンを測ってみる事にしました。ホスゲンの検出に使用する呈色反応化学テープは、軍関係で大量に購入されて入手が難しいとの事でしたが、たまたまキャンセルが有り入手する事が出来ました。

<ホスゲン、ホルムアルデヒド、PM、TVOCの測定>

ホスゲン用ケミカセットを装着したところ


 ホスゲン用のカセットはイソシアネートの様に保存温度条件が厳しくないので取り扱いが楽です。

 しかし、感度が低く、最低検出濃度が5ppbの仕様です。5ppb未満では反応していても数値として表示されません。

 このため、テープの呈色反応も目視し、撮影する事にします。

 イソシアネートの検出では低濃度の時は約15分おきでテープが送られますが、ホスゲンは約45分おきなので、場所を変えながら動いて調べるのには時間が掛かりそうです。

 とりあえず住宅街の自宅の外気を測ってみます。


測定中の様子


 有毒ガス検知器SPM Flexにダンボールを被せているのは、直射日光がテープの光学センサー部に当ると誤動作する事がある為です。


  同時に2種類の測定器でTVOCとHCHO(ホルムアルデヒド)も測ってみます。但し、HCHOはオレンジ色の測定器しか測る機能が有りません。









<測定結果>

・ホスゲン→ゼロ(但し、読み取り限界5ppb未満の呈色反応有り)

・反応が見られるテープを目視確認・撮影

→室内では反応が無いが、屋外ではわずかな反応が有る

屋外で呈色反応が出るテープ







・顕微鏡で反応部を撮影(表面に付着している異物ではなく内部で反応している確認)

→表面への花粉等の付着ではなく、テープの内部が反応して変色している

テープの顕微鏡写真(花粉等の付着ではない)

















・PM、HCHO、TVOCの測定

①LKC-1000S+2ndによる計測

→湿度が高い朝晩はPM10、PM2.5が高い

 直射日光が当たって温度が高い昼間はVOCが散発的に発生している

 一番温度が高い頃にはHCHO(ホルムアルデヒド)がわずかに増加している
















②AtmotubePROによる計測

・湿度の高い早朝はやはりPMが高い。中でもPM1(0.3㎛の検出下限から1㎛)のごく小さな粒子が多くを占めている
















 温度の上昇に伴いVOCが急激に増加しているが、こちらの測定器は応答が遅いのかデータ平均化の違いでLKC-1000S+2ndの様な散発的な発生として記録されていないが傾向は似ている。


<ホスゲンについて>

ホスゲンは湿気によって緩慢に加水分解され,塩酸を形成する。肺の中で塩酸が発生し、高濃度では泡を吹いて窒息する為に化学兵器に利用される。

ホスゲンは,イソシアネート,ポリカーボネート,染料,農薬,および医薬品をはじめとする多くの化学物質製造の中間体として使用される。(下記リンクのウレタン原料工業会資料より)

http://www.urethane-jp.org/manual/2009/04/post_7.html