2017年5月25日木曜日

窓を開けると近所の柔軟剤臭と猛毒のイソシアネートが入ってくる

 近所からの柔軟剤臭が入るので、最近までは窓や換気口は全て閉じていましたが、このところ気温が30℃にもなり、熱中症で倒れるおそれも出てきて窓を開けざるを得ません。

 窓を開けて風を網戸越しに入れた場合の、近所の柔軟剤等から出ているVOC(揮発性有機化合物)や猛毒のアレルギー物質であるイソシアネートを測ってみました。但し、VOCについては、クロマトグラフが無いので個々の成分は分からず、総量のTVOCを測ることになります。

<測定方法>
測定風景

 暑い時に窓を開けて網戸越しに風をいれている状態で測定します。

 この時は南寄りの風で風速は0.9~6.5m/s(気象庁のデータで一番近い点)でした。

 イソシアネートは米国Woneywell社製の SPM Flexという化学テープ方式毒性ガス検知器で測ります。産業用機器で高価な為に借用品です。写真の黄色と黒のツートンカラーの機器です。詳細はこちら→リンク
 国産でも同じ方式の機器が警視庁の化学テロ対策用として開発されましたが、残念ながらイソシアネートには対応していません。

 TVOCは、上記SPM Flexの吸気チューブ先端に置いた米国Indiegogo社のAtmotubeという超小型の空気質モニターで測ります。こちらは個人用に売られている物で公式な値としては使えませんが、目安にはなります。スマホでコントロールしたりデータを見たりダウンロードも出来ます。


<測定結果>
 測定を終えた所で、SPM Flexのテープを機器から外してイソシアネートに反応しているか撮影してみました。
呈色反応

 呈色反応ではっきりと赤く変色し、イソシアネートが存在している事を示しています。
 
写真で見えている部分は、試験終了の23日夜の部分です。但し、感度は低いですが、一部他のガスにも反応(副反応)するので、注意が必要です。私が調べたところ、これらのガスはかなり臭うので、存在した場合は臭いで分かるので除外できると思っています。












<TVOC測定結果>
 5/22は5:40に窓を開けたら7時ごろから南風に乗って柔軟剤の酸っぱい臭いが部屋に入って来て咳が出たり、体のあちこち(頭や背中)が痒く、目が痛くて複視がひどかった。

 急いで測定の準備をして10時から測定に入りました。AtmotubeのTVOCが下がる時の応答が遅いので、だらだらと下がって(外気の方がTVOCは低い)行きますが、赤丸の様に上昇しているピークが三つ有り、柔軟剤の香料成分と思われます(以前のガスクロマトグラフ分析の経験から推定)。

 5/23の午前には0.1ppm増加している部分が有り、この時も酸っぱい臭いがして涙が出て目が痛く複視にもなってきました。マスクをしないでいたら頭痛がしてきたので、暑いですが活性炭のマスクをしました。




















<イソシアネート測定結果>
 測定器から得られるデータは、値がゼロ(0.4ppb未満でゼロになる)を越えると1~2秒おきにデータが記録され膨大なデータになります。そのままではExcelの処理能力を超えてしまうので、分割して処理しました。ピーク値を拾って間引きし1分間隔にしてAtmotubeに合わせると同じグラフに表示出来ますが、ちょっと時間と頭が必要なので、将来に回します。

①5/22の結果 
 測定を始めて直ぐに1.4ppbを記録し、この値はACGIH(米国産業衛生専門家会議)の許容限界値1ppbを越えている。この時は柔軟剤の酸っぱい臭いが部屋に入って来て、複視(私の場合文字が片目でも縦にぶれて見える)がひどい状態で耳鳴りもしました。そのうちセキも出てマスクをしましたが、目にしみました。

 昼過ぎに風が強くなってやっとすっきりとしてきました。


②5/23午前の結果
 深夜から早朝にかけて1ppb→0.8ppbと一旦下がりましたが、ゼロにはなりません。この時、風上側の近所で強い柔軟剤臭のする家が夜間も洗濯物を干していました。

 更に8時頃に1.2ppbまで上昇しました。各家庭で洗濯物を干して、ある程度乾いて来た頃と推定されます。この頃は酸っぱい柔軟剤臭がして、TVOCもピークが観測されました。
 朝食の頃から涙が出て目が痛く、マスクをしました。9時半頃には複視がひどくなりマスクを外していたら頭痛がしてきました。





















③5/23午後の結果
 17時頃からツンと鼻にくる臭いがして、18時頃に近所で救急車の音で外に出ると、南側(風上側)から酸っぱい石鹸の臭いがしてきました。救急車も風上の南側に停車していました。
 その後19時頃に0.8ppbとなり、喉がいがらっぽくなりました。20時台には0.9ppbのピークが出ました。夕食の支度が始まる時間からお風呂の時間にかけて上がっているのは、換気扇で排気された柔軟剤成分が何軒分も合わさって高くなっていると私は推測しています。
 臭いでしかまだつかんでいませんが、強く長持ちする柔軟剤臭は100m以上離れても臭いを感じます。今朝もすれ違った近所の強烈な柔軟剤臭の人は、歩いた跡に帯状に臭いを残し、臭いを感じなくなったのは130m位先でした。警察犬が臭いを嗅いで跡をたどる様に、人間でも跡をたどる事が出来る強さです。
 風下にある我が家は何軒分も柔軟剤臭やイソシアネートを浴びて、それらが合わさって高いレベルになっていると思われます。




















 これから暑くて窓を開ける季節ですが、イソシアネートをずっと吸っていると工場の危険レベルに達しているので、どうしたものか悩ましいです。

2017年5月22日月曜日

住宅街で米国のイソシアネートのばく露限界1ppbを越える

 昨年、米国産業衛生専門家会議(ACGIH)はTDI(トルエンジイソシアネート)の時間の時間加重平均ばく露限界値を5ppbから1ppbに引き下げました。厳しくした理由を調べていたのですが、米国産業衛生学会、展示会のプレゼン資料に解説されているのを見つけましたので、それを紹介したいと思います。

 この1ppbという値は、我が家の外気で観測され、窓を開けているとオーバーする時が有ります。また混雑した電車の中や駅の乗り換え等人の多い所でも越えてしまっています。これは、トルエンジイソシアネートを扱う工場の中の空気より一般家庭や人の多い場所の方が有毒物質が多い事を意味します。

以下、プレゼン資料(英文)関係部分の機械翻訳
原文はこちらの33ページを参照→リンク
201621日、ACGIHTDI TLV-TWA8時間の時間加重平均)を5ppbから1ppbに、TLV-STEL15分間の短期曝露限界)を20ppbから 5ppbに引き下げた。

TLVsを下げるACGIH決定に関するコメント
2016 TLV基準:喘息、肺機能、眼刺激
→以前のTLV基準:呼吸器、感作

→職業訓練、技術管理、医療監視における産業の改善は、OAの発生率を低減する効果を実証している(2011-12年の調査から)。 これは、TDIの製造および使用が増加している一方で、イソシアネートに起因する職業性喘息症例が米国および他の世界で減少していることに反映されている。 しかし、ACGIHはこれらの結果を示唆的なものとみなしているだけです。

ACGIHは、TLVを低下させると職業性喘息のさらなる減少につながると考えているが、この肯定の支持は弱いと考えられる。

ACGIHは、TWA濃度に関連する健康影響が、単一または複数のピーク暴露の発生によって影響を受ける可能性があることを認識し、OEL勧告の複雑さを増す。


上の特殊用語の解説:環境省のHPより
【作業環境許容濃度(ACGIH)】
 ACGIH (米国産業衛生専門家会議)では、作業環境許容濃度をTLV (Threshold Limit  Value )と呼んでいる。TLV は、ほとんどすべての作業者が毎日繰り返し暴露しても、有害な健康影響が現れないと考えられる化学物質の気中濃度である。TLV は、産業界の経験、ヒトや動物による試験・研究などの利用可能な情報に基づいている。これら情報の量と質は物質によって異なるため、TLV の精度にも幅がある。TLV は、安全濃度と危険濃度の間のはっきりした線ではないし、毒性の相対的な指標でもない。

TLV には次の3 つのカテゴリーがある。
*TLV-TWA (Time-Weighted Average)
1日 8時間、1 週40 時間の時間荷重平均濃度
*TLV-STEL (Short-Term Exposure Limit)
たとえ8 時間TWA がTLV-TWA 内にあっても、1日の作業のどの時間においても、超えてはならない15 分間TWA として定義される。当該物質に急性毒性が認められる場合、TLV-TWA を補足するために設定されるものであり、独立して設定されるものではない。
*TLV-C (Ceiling)
作業暴露のいかなる場合においても超えてはならない濃度

2017年5月8日月曜日

着衣にくっついて室内に侵入する柔軟剤臭とイソシアネート

 妻が整骨院から帰ってきたら凄まじい柔軟剤臭です。じっとしていると臭いませんが動くと臭いがひどく気持ちが悪くなる程で、目にも沁みます。ブラウスを着換えて貰ったらひどいのは直りました。我が家では石鹸洗剤しか使ってないので、整骨院で他の患者から貰ってきた様です。

 急いで準備をして、脱いだブラウスに付着している柔軟剤の香料カプセルから発生すると思われるイソシアネートとTVOC(揮発性有機化合物の総量)を測定してみることにします。我が家の室外では1ppb以上のイソシアネートが観測されるので、汚染が無い室内玄関の下駄箱の上で測定する事にします。

<使用測定器>
ブランク確認

①イソシアネート測定用
 米国ハネウェル社製の化学テープ方式毒性ガス検知器SPM Flexを使用します。テープにしみ込ませた試薬の所へ空気を通して反応すると色がガス濃度に従って変化する仕組みです。 広範囲のイソシアネート類が検出可能です。トルエンジイソシアネートでは0.4ppb(ppmの千分の一)からデジタル表示可能な高感度です。それ以下の濃度でもテープに残された反応の痕跡から微量のイソシアネートの有無を見る事ができます。半導体工場等の有毒ガスを使用する職場でガス漏れ検知に使用される工業用機器で高価な物です。

②TVOC簡易測定用
米国Indiegogo社製Atmotubeポータブル大気汚染モニターを使用します。
TVOCと温度、湿度を測定できる超小型の簡易測定器で、スマホと通信しながら使用します。個人用の機器で正式な測定には使用できませんが、手軽に使用する事ができます。

 スマホから測定データをPCにダウンロードしてExcelで処理し、グラフを描かせたり出来ます。

0.01ppm(10ppb)からTVOCを測定できます。

 今回はSPM Flexと連携させてテータ処理し、同じグラフに表示させてみました。









<測定開始>
 横にした大きめのビニール袋の底に穴を開け、その穴にSPM Flexの吸気チューブとAtmotubeを取り付けます。最初測定環境にイソシアネートが無い事を確かめる為に試験サンプル無しで1時間測定します。
サンプル投入
サンプルは綿100%


















 柔軟剤臭がするブラウスをビニール袋に畳んでそっと入れます。材質は右の写真の様に綿100%です。
 そっとしている時の臭いは鼻を近づけないと分からないほどかすかです。

 妻が着ていた時は動くとひどい臭いがしたので、暫くして動かしてみる事にします。その前に、ブラックライト(紫外線ライト)を照射して試してみることにします。

<測定結果>
 ブランク確認ではテープは全く反応しておらず、測定環境は問題有りませんでした。

 ブラックライトの紫外線では変化有りませんでした。LED照明なのでパワーが足りないのかもしれません。一応、紫外線硬化の物に使われるライトですが。

 次に、ビニール袋に入れたブラウスを叩いたり揺り動かしたりしてみました。その時はSPM Flexのデジタル表示はゼロのままです(0.4ppb未満)。そうしているうちにだんだんと臭いがきつくなってきました。しかし、後からデータを見て見ると動かした後にピークで0.7ppbのイソシアネートを検出していました。ちょうど夕食で機器を離れた時です。試料を動かした時ではなく、資料とそれを覆うビニール袋を全部取り除いてから数値が出ています。

 後からテープの呈色反応を確認すると、下の写真の様に試料を動かした時から反応し、資料が無くなった後の方が濃度が上がっています。資料が無くなって約1時間後にやっと反応が無くなっています。

<呈色反応の様子>ケミカセットのテープをデジカメで撮影
時刻との関連を位置から割り出す為に定規を一緒に撮影しています。















<SPM FlexとAtmotubeのデータを連携させたグラフ>

  試料とビニール袋を取り除いた後にイソシアネートのピーク値0.7ppbを記録しています。この時はちょうど夕食中で、人の動き(人に付いてくる)や外部からの侵入(玄関のドアを開くと外から入る)は有りません。

 一方、TVOCはサンプルを除去すると直ぐにゆっくりと下がり始めており(直ぐに下がらないのは測定器の特性と思われる)イソシアネートのピークの所でわずかな上昇が見られます。

 我が家は窓を開くとイソシアネートや柔軟剤臭が入って来るので窓や換気口は通常締め切りです。このためTVOCは高いのでそれにかき消されてしまっているのかも知れません。

 湿度(空色の線)を見ると、試料を動かした所で湿度が上がっているのが分かります。香料成分に湿度センサーが反応したものか?

 いずれにしても、他人から貰って来た柔軟剤臭成分で0.7ppbものイソシアネートが出るとは驚きです。この柔軟剤臭の持ち主はもっと凄まじいでしょうし、この様な人が多数居る混雑した電車の中では、工場の中のイソシアネート規制値より値が高くなってしまうでしょう。米国産業衛生学会の職場での管理値は1ppbですので、それを容易にオーバーしてしまいます。