2016年12月15日木曜日

柔軟剤からイソシアネートが発生する確認試験:ポリウレタンの紫外線崩壊によると思われる

 今年の4月にキッチンペーパー片全体に希釈した柔軟剤をしみ込ませてそこから出るイソシアネートやその他の揮発性有機化合物を検出しようとしましたが、検出出来ませんでした。その時は近隣からの影響を避ける為に少し薄暗い我が家の玄関下駄箱の上での実験でした。

 一部検出した時も有りましたが、その時は妻が外で貰った柔軟剤臭を放ちながら玄関ドアを開けて計器の前を通過したので、外部からの影響が濃厚でした。

 この度VOC研究会から借用した計測器をこの実験で2日間使用出来る機会が有りましたので、実際の柔軟剤使用に近い状態(布にしみ込ませて天日に干す)でテストしてみる事にしました。
 今回、時間が無かったのと実際の屋外での状態(隣同士別々の柔軟剤使用)を考慮して、3社の香りの強い柔軟剤を使用した布を一緒に干して試験しています。

試験期間:2016年10月11日~12日の2日間

<試験結果>
有毒ガス検知器(ChemKey TLD Honeywell社製)で猛毒のイソシアネートを検出
 我が家はほとんど常時近隣からイソシアネートが流れて来ている環境です。それでも香りの強い柔軟剤処理をした布を干した時は、太陽の直射日光が当たり紫外線が強くなった時は、計測器のデジタル表示下限2PPBを超える2PPB~3PPBが表示された。表示は2PPBだが、感度を上げる為に暴露時間を長くしているので、実際にはこの1/5~1/15が真の値となる。

 下の黄色いテープに赤い丸が出ている部分がイソシアネートを検出した部分で、濃い部分は濃度が高い時を示す。テープを切断しないで各行毎にテープを撮影したので、行毎の色のマッチングは正確では有りません。






























・VOCモニターのTVOCとイソシアネート計測値、紫外線強度変化を重ねたグラフ
 紫外線強度は気象庁のつくば10月の累年平均値データを使用→リンク
 但し、11日は測定地点では晴れなかったのでデータは入れていない



 香料成分の放出と思われるTCOCのピークはサンプル布を干して12時間後位の深夜にピークとなっている。
 イソシアネートについては、10/11(サンプル布を干した日)は曇りで直射日光が当たらず、強い値の観測は無く通常程度の検出だった。ところが、10/12は朝から晴れて直射日光が当たり、紫外線の強度に比例しイソシアネート値が大きくなって昼前にピークとなりその後は減少した。13:03にサンプルを遠ざけたら14:24にはケムキーの表示はゼロとなった。しかし、テープには読取限界以下の値が検出されたままである。これは近隣からの影響と思われる。

クロマトグラフによる成分分析


























柔軟剤布を干している時の成分]-[取り除いた時の成分]の差分


















 イソシアネートが強く検出された時間帯にRT(リテンションタイム)が3,100のあたりにピークを持つ物質が検出されている。


イソシアネート検出バッジでの結果









←イソシアネートバッジは検出できなかった。
 検出した場合は、三角の中のビックリマークがピンクから赤に変色する。





←こちらは変色した場合の色見本





<お断り>
 今回は常にイソシアネートが検出される(臭いの強い柔軟剤を使用する家に取り囲まれて、洗濯物が出ていなくても、家の常時換気システムから排気されている)環境で行ったので、100%の信頼度ではありません。しかし今回の実験でかなり自信を深めました。イソシアネートの発生強度と紫外線強度が一致し、洗濯物を取り除くとイソシアネート検出装置の表示がゼロに落ちている。(但し、テープは化学反応しており、光学的読取の限界以下でイソシアネートは存在している)。

 次回、機会が有ればブラックライト(紫外線を発生するライト)で純粋に紫外線だけを作用させてイソシアネートが激しく出るか、また山中等のきれいな空気のイソシアネートが無い所で試験してみたいと思います。

<イソシアネートが発生するメカニズムの推定>
 柔軟剤の合成香料を包んでいるポリウレタン製マイクロカプセルが紫外線により光分解を起こし、通常の分解よりはるかに多いイソシアネートが発生していると思われる。実際の現象としては、天気の良い日(紫外線の強度に依存するので季節変動も有る)の正午ごろをピークとしてイソシアネートが発生すると思われる。これは、洗濯物を干すタイミングにもよるが、必ずしも香り成分のピークと一致しない。

 私の症状からしても、晴れた日は昼前頃から目が痛くなり、咳込んだり、頭痛がひどくなる現象と一致する。そして午後3時ごろになると、自然と忘れた様に治ってしまう。

 以前、3回柔軟剤からイソシアネートが発生することを確認する試験を行ったが、3回目は再現できなかった。これは、室内の薄暗い所で測定を行ったので、この条件から紫外線のほとんどない所では容易に測定できる量のイソシアネートが発生しなかったと思われる。

 但し、ポリウレタンは自然崩壊もしており、常にごく微量の測定限界以下の分解産物であるイソシアネートが発生していると思われる。また、この崩壊は水分(汗や湿度)によっても加速されたり、機械的な力(繊維がこすられる)によっても加速され、香りを強く出す仕組みと一致する。

ポリウレタン崩壊の解説資料
ポリウレタンの光分解機構の解析(香料カプセルの殻に使われている物が有る)
高分子論文集 Vol.51, No.9, pp, 612-618 (sep., 1994)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/koron1974/51/9/51_9_612/_pdf

ポリウレタンの劣化
長崎大学学術研究成果リポジトリ
http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/6901/4/sk08_04_t.pdf#search='%E7%AC%AC%EF%BC%93%E7%AB%A0+%EF%BC%B0%EF%BC%B0%EF%BC%A4%EF%BC%A9%E8%A8%88%E3%83%9D%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%AC%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%81%AE%E7%86%B1%E5%8A%A3%E5%8C%96%E6%8C%99%E5%8B%95'


<試験方法>
1.布サンプル
①10cm四方の綿100%布
②10cm四方のウール100%布
③10cm四方のアクリル90%、ウール10%布(1社のみ10cmX20cm布追加)

2.香り付き洗剤と香りの一番強いランクの柔軟剤を使用
 ・香り付き洗剤と柔軟剤の組み合わせ 1社
 ・香りの強いランクの柔軟剤 2社

3.使用測定器
①有毒ガス検知器 ChemKey TLD Honeywell社製
 (半導体製造工場等の有毒ガスを扱う職場で、事故でガスが漏れた時に警報を鳴らして従業員を保護する装置です。これと同じ原理の国産の装置が、警視庁のテロ対策で使用されています)
 古くから有る確立された技術で、機器の取り扱いも容易ですが、欠点は検出するガスの種類(グループ)毎にテープを変えなければならず、また化学変化を使用するので、テープに使用期限が有る事です。測定にテープを消費し、高価な事も有ります。また、反応性の高いイソシアネート用テープ等では、保管には冷凍保管が必要です。干渉ガスと直射日光を避ける事にも注意が必要です。

②ポータブルVOCモニター JHV-1000  株式会社ジェイエムエス製
 簡易ガスクロマトグラフで空気を媒体ガスとして使用しているので管理が容易です。しかし、簡易と言えどもガスクロマトグラフ装置ですのでメンテナンスが必要です。今回は、使用前にシリカゲルが変色しているのに気が付いたので、急遽再生品と入れ替えて貰いました。。

③ガス検知バッジ SAFEAIR 芳香族イソシアネート(TDI/MDI) 但し、エアロゾルは推奨されない
                             (干渉により他の芳香族イソシアネートにも反応)
 最小検知濃度/時 TDI:5.0ppb/1時間   MDI:3.5ppb/1時間


4.実験場所:自宅和室のガラス窓内側に測定器を置き、外側に柔軟剤布を干す。
家の中の測定器






←ChemKey TLD
直射日光禁止なので、厚いカーテンを閉めている。




←青い箱型の装置がVOCモニターで、左のノートPCのExcelマクロにより制御される。





香り付き洗剤(1社)と柔軟剤(3社)を用意


外の流しで洗濯とすすぎを行う。
















洗い




















流水すすぎ・・・写真無し(水道を出しっぱなしにしてこのまますすぐ)



溜めすすぎ





















外に干す







←短い方がケムキーのサンプリングチューブ
←長い方がVOCモニターのサンプリングチューブ










ビニール袋をかける

VOC値が一向に上昇しなかったので、風に流されている事を考慮し、ビニール袋を掛けてみた。













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