2013.02.03
トルエンジイソシアネートのMSDS(職場のあんぜんサイトより)を追記
「長期に亘って頭痛、健忘、集中力欠如、錯乱、人格の変化、易刺激性、鬱のような中枢神経系に対する影響」という記述に注目
「IgE感作を認めない症例の方が気道過敏症や喘息症状の程度が強いことが知られている」という資料を末尾に追記しました。
<イソシアネートの毒性はトルエンの一万倍、青酸ガスの1千倍>
Wikipediaによると、イソシアネートの中でも一番使用されているTDI(トルエンジイソシアネート)の毒性は以下の通りです。→リンク
・TDIの過剰暴露は、喘息へとつながる可能性のある呼吸器系への影響を引き起こすので、許容濃度を厳守する必要がある。
・一度喘息を起こしてしまうと、ジイソシアネートに対して過敏となり、許容濃度以下であっても再び喘息となる。TDIの蒸気、エアゾール或いはミストは眼刺激を引き起こす。
・TDIは中程度の皮膚刺激性を有しており、稀に皮膚感作や皮膚炎を起こす。
・TDIを口から摂取した場合の毒性はあまり大きくはないが、吸入による摂取では毒性が現れる。
また、日本産業衛生学会の「許容濃度等の勧告(2015年度)」→リンク
によると、皆さんご存知のトルエン(シンナーの主成分)や青酸ガスと比べてその恐ろしさが分かると思います。
トルエン(シンナーの主成分) 50ppm(百万分の50)
トルエンジイソシアネート類(TDI) 0.005ppm
シアン化水素(青酸ガス) 5ppm
成分Aの平均暴露濃度 成分Bの平均暴露濃度
---------- + ---------- + ・・・
成分Aの許容濃度 成分Bの許容濃度
の様に個々の許容濃度のみで判断してはならないとあります。従って、トルエンジイソシアネートとシアン化水素等に暴露された場合は、更に厳しいものとなります。
寒くなり良い匂いの長続きするジイソシアネートを含む柔軟剤で洗ったシーツを被って寝たら、どういう事になるか、容易に想像できます。
<トルエンジイソシアネート(Toluene diisocyanate)のMSDS> 職場のあんぜんサイトより
特定標的臓器・全身毒性
(単回ばく露): ヒトについては、眼、気道、皮膚に対する刺激性、激しい乾性の咳、喀痰、胸部絞扼感、呼吸困難、悪心、嘔吐、重篤な気管支痙攣を伴った気管支炎、肺水腫、肺炎など が報告されている。 21)
ヒトについては、さらに「長期に亘って頭痛、健忘、集中力欠如、錯乱、人格の変化、易刺激性、鬱のような中枢神経系に対する影響」が見られ 21)、また「高揚感、運動失調、断続的な四肢の痙攣、めまい、意識消失、頭痛、集中力欠如、記憶障害、混乱、被刺激性、抑うつ」等の記述がある。 33)
呼吸器、中枢神経系の障害(区分1)
特定標的臓器・全身毒性
(反復ばく露): ヒトについては、「喉への刺激性、呼吸困難」等の記述がある。 33)
実験動物については、「鼻腔の炎症、間質性肺炎、カタル性気管支炎、気管炎、気管支炎、肺炎に伴って細気管支壁における線維組織の増生」の報告がある。 21)
また、実験動物では「肺、気管、肝臓で被験物質投与によると考えられる変化が観察され、気管支肺炎、肺の気管支上皮の再生像及び線毛消失、肝臓の脂肪化」が見られたとの報告がある。 53)
実験動物に対する影響は、呼吸器への影響が区分1、肝臓への影響が区分2に相当するガイダンス値の範囲でみられた。
長期又は反復ばく露による呼吸器の障害(区分1)
長期又は反復ばく露による肝臓の障害のおそれ(区分2)
<イソシアネートが柔軟剤から検出>
(ある種の)柔軟剤から欧米規制物質のイソシアネートが検出されたというのが、常陽新聞に載っていました。常陽新聞の記事→リンク
また、柔軟剤メーカーの特許にイソシアネートを使用すると書かれているものがあります。
L社の特許でマイクロカプセル(この中に香料を入れて衣類着用時にカプセル壁が破壊され匂いを発する)の壁物質としてイソシアネートが使用されることが例示されています。→リンク
リンク先の詳細説明 【0016】 [(a−2):壁物質]の所です。
<イソシアネートの検出は難しい>
スペインの安全衛生組合の資料にイソシアネート暴露の危険に関する資料が有りました。
その中に職場環境中のイソシアネートのサンプリングとHPLC(高速液体クロマトグラフィー)による分析の信頼できる方法が記載されていました。→リンク(スペイン語)
ピリジル ピペラジン 試薬を染み込ませたガラス繊維のフィルターを用いる等、条件が書かれています。(私はHPLCは素人なので、この訳は正確でないかもしれない)
また、イソシアネートにさらされた労働者にしばしば観察される症状の兆候の分布が以下の様に書かれています。
A.気管支喘息 49%
B.慢性気管支炎 14%
C.鼻炎 14%
D.慢性の肺閉塞症 9%
E.結膜炎 8%
F.蕁麻疹 2%
G.湿疹 2%
H.発熱 2%
また、ここで出て来る”pyridyl piperazine”とHPLCをキーワードとして検索すると、神奈川予防医学協会でこの有効性を確認した論文が出ていました。
TDI測定における1-(2-pyridyl)piperazineを用いたHPLC法に関する検討(第151回関東地方会例会)
→リンク(日本語)
これによると、定量下限は約0.5ngで、分解能、定量感度が良好で、共存物質の影響も少なく、TDIの分析法としての有用性が認められたとあります。
HPLCのやさしい解説は、日本分光という会社の技術情報「HPLCの基礎」が素人にも分かり易いです。→リンク
イソシアネートに対するアレルギー検査は職業病診断として確立していますが、一般的ではなく、近くのアレルギー科を謳っている医院に聞いたら、健康保険では・・・という事で警戒されて、自費でならOKという事でした。
しかし、以下の資料を見たら、自費で検査を受けなくて良かったと思いました。お金の無駄になるところでした。 2016.01.12追記
イソシアネートによる職業喘息では抗原特異的なIgE抗体の認められる症例(感作例)は10~20%と言われているそうです。更にIgE感作を認めない症例の方が気道過敏症や喘息症状の程度が強いことが知られているそうです。以下の日本職業・環境アレルギー学会総会 特別講演の資料を参照して下さい。→リンク
ちょっと古いですが、以下の日胸疾会誌に有る症例もイソシアネートの抗原としての安定性に問題を投げかけています。→リンク
しかし、以下の資料を見たら、自費で検査を受けなくて良かったと思いました。お金の無駄になるところでした。 2016.01.12追記
イソシアネートによる職業喘息では抗原特異的なIgE抗体の認められる症例(感作例)は10~20%と言われているそうです。更にIgE感作を認めない症例の方が気道過敏症や喘息症状の程度が強いことが知られているそうです。以下の日本職業・環境アレルギー学会総会 特別講演の資料を参照して下さい。→リンク
ちょっと古いですが、以下の日胸疾会誌に有る症例もイソシアネートの抗原としての安定性に問題を投げかけています。→リンク
子供のクラスがヒドイ柔軟剤臭が暴露されています。
返信削除子共はそのクラスで、臭いがキツイといってました。そして、毎日の様に授業中に知らない間に眠ってしまうのですが、これはこのイソシアネートと関係あるのでしょうか?
休みの日は、家で過ごしても、そんな事がないのです。うちは柔軟剤も合成洗剤も使ってないのです。
コメント有難うございます。
削除これは私の経験ですが、柔軟剤臭の人と接すると通常の疲れとはちがう、ひどい疲れや眠気に襲われます。証明は難しいですが原因の可能性は有ると思います。
一度学校に相談されるのも手と思いますが、慎重にしないといじめに会う可能性も有るので要注意です。大勢の人が香り付き柔軟剤を使って、平気で良い香りと思っているのですから。
イソシアネートの中でも良く使われているトルエンジイソシアネート(トリレンジイソシアネートとも呼ぶ)の毒性を職場の安全サイトで調べると、以下の記述が有ります。
「ヒトについては、眼、気道、皮膚に対する刺激性、激しい乾性の咳、喀痰、胸部絞扼感、呼吸困難、悪心、嘔吐、重篤な気管支痙攣を伴った気管支炎、肺水腫、肺炎など が報告されている。 21)
ヒトについては、さらに「長期に亘って頭痛、健忘、集中力欠如、錯乱、人格の変化、易刺激性、鬱のような中枢神経系に対する影響」が見られ 21)、また「高揚感、運動失調、断続的な四肢の痙攣、めまい、意識消失、頭痛、集中力欠如、記憶障害、混乱、被刺激性、抑うつ」等の記述がある。」
これは職業病の症状ですが、私の測定したところでは、米国の職業病予防の規制値を我が家の外気や電車の車中で越えています。学校ではまだ測ったことがないのですが、おそらくひどい状況でしょう。この中に思い当たる他の症状が無いでしょうか?
最近分かってきたのですが、この有毒成分を出しているのは香りを長持ちさせるのに香料を包んでいるマイクロカプセルという透明な膜の様な物で、これは繊維から容易に剥がれて空中を浮遊したり床や椅子に付着し、そこに座るとまた付着したり舞い上がったりしている様です。これが柔軟剤を使っていない人にも付着し、学校や保育園・幼稚園から子供が帰ってくるとひどく柔軟剤臭くなってくる原因です。そして、家の中にも落ちたり浮遊します。
今すぐ出来る対策は、できるだけ暴露量を減らす事です。私の経験ですが、余裕が有る時は少しぐらいの暴露は平気ですが、溜まっていると少しの暴露でもひどい症状が出ます。私の対策は、外ではできるだけPM2.5対応のマスクをして、外から帰って柔軟剤臭かったら直ぐに着替える事をしています。外から帰ってきた妻が柔軟剤臭い時も症状が出るので、すぐに着替えて貰っています。
最近やっと学校や塾で香りのきつい柔軟剤を自粛する様にと活動する所が増えてきています。また、今年の環境や医学の学会でも取り上げられる様です。
子供が幼稚園で柔軟剤を沢山付着させて帰って来ます。その衣類を重曹で洗っていますが、その時に最も苦しくなりますが、干す時は素手だと手がしびれます。お湯を使い、洗い・すすぎで6回洗濯回してもケミカル匂いはとれません。
返信削除柔軟剤は分解するときに毒性が増すということでしょうか…。
コメント有難うございます。
削除重曹は使ったことが無いのですが、我が家では石鹸成分のみの液体洗剤と衣料用漂白剤のみを使っています。昨日インフルエンザの予防接種で掛かりつけ医に行って帰ってくるとズボンやシャツが柔軟剤臭く、特にズボンがひどい状態でした。この物は見ていませんが、以前の観察で柔軟剤の香りのカプセルやその破片が大量に付着しているのが分かっているので、それらを部屋中にばらまかないように直ぐにそっと着替えて今朝洗濯してもらいました。
今干してあるズボンの臭いを嗅いだら、臭いは取れていました。
以前、別居している娘が柔軟剤を使っている時に帰省し、私の物と一緒に洗濯したら、私のシャツに臭いがうつってしまい、咳が出たり頭痛になったりしました。4回くらい洗ってもまだ臭いは完全に取れませんでしたが、やっと咳は出なくなりました。
10年以上タンスに眠っていた息子のシャツを顕微鏡で見ると、臭いはしませんが、所々にまだ香りのカプセルの破片がくっついています。条件によってはなかなか分解してくれません。しつこい成分ですがメーカーは成分を公表していません。
私の調べた所では、臭いの成分の毒性は低いです。良く使われる香料のモルモットの致死量は1g位だったを記憶しています。問題は香料を長持ちさせる為に、香料成分を包んでいるカプセルで、これが破裂する(香りを放出する)時に、カプセルの成分が高温で分解し、猛毒のアレルギー成分「イソシアネート」が出る事です。一度症状が出ると、花粉症の様に、ごくわずかでも症状が出ると言われています。この物質は職業病で恐れられている物質で、最近は職場の規制値を越える事も有りますし、一般の生活環境の規制値をはるかに超えています。
また、大手メーカーの特許を見ると、香料成分を固める為か、アクリルアミドという物質も使っている様ですが、これは神経を犯すし、発がん物質です。なぜこんな猛毒を使うのか疑問ですが、分析するのが困難な物質です。